前回は止むを得ず欠席してしまったので、今回のレポートは関連書籍をまとめたものにする。レポートをまとめるに当たって、まず大きな枠組み(全体構造)を考えてみた。リーダー学にはリーダー論と組織論があり、それぞれ欠くことのできない要素である。そしてこの二つの論を組み合わせることで初めてリーダー学というものが成り立つ。
今回はリーダー論について詳しくみていく。
1.リーダー論とは
教師は学級のリーダーである。学年主任は学年のリーダーである。そして学校長は学校のリーダーとなる。組織があれば、必ずそこにはリーダーが存在する。組織の一員として働く以上、いつかは自分がリーダーになっていく可能性がある。
現に、私は今5年生の学年主任をしている。4クラスで2クラスはベテラン女教師。(1名は講師)もう1クラスは若手男性教師という構成だ。30代、40代の教師が極端に少ないという現状を考えれば、私が学年主任をやるというのも仕方のないことではある。しかし、まだまだ力不足で、学年をまとめげるということはできていない。他の3人の先生方に助けてもらいながら何とかやっているという状況だ。
話を戻す。組織には必ずリーダーが必要になってくる。ではリーダーとはどのようなことをすればいいのだろうか。どのような人がリーダーにふさわしいのだろうか。これは逆説で考えるとよく分かる。「組織のルール/浜口直太」という本に「リーダーに向かない人の共通点」というのが紹介されている。全部で23項目ある。紹介する。
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リーダーに向かない人には次の共通点があります。
①元気がない②声が小さい③自信がなさそうにぼそぼそ話す④人の話を聞いていない⑤質問されても正確に答えられない⑥話がゆっくりすぎてとろい⑦話がすぐ脱線する⑧言葉と言葉が開きすぎて、話しがシドロモドロ⑨論理的に筋道立てて話せない⑩わからなくなるとすぐに黙り込む⑪「あの~」「え~と」など間抜けな言葉を頻繁に使う12)落ち着かずじとしていない13)人の目を見て話せない14)話したり、聞いたりしている時、貧乏ゆすりやボールペンで遊ぶ15)組織や会議に遅れてくるなど時間にルーズ16)プレゼンやスピーチをする時、必要な資料を準備しタイムリーに配れない17)講事録などつくらせると、基本的な関連事項や大事なポイントを外している18)頼まれたことを、できる限りすぐやらない19)書類など作った後、ダブルチェックしていない20)上司に見せる書類も、きちっと自分なりにリサーチして完璧に出していない21)新聞や本もほとんど読まずに、世間のことを知らなさ過ぎる22)何事も途中で投げ出し中途半端なことばかり23)一つのことを初めても、他のことに手を出すので結局全てにおいて成長がない
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以上の23項目を大きく4つにまとめてみた。
分類 該当項目(重複あり)
1.話す聞く力(コミュニケーション力)の不足
①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪13,14,
2.事務処理能力の不足
15,16,17,18,19,20,
3.勉強不足(読書不足)
21
4.集中力の不足
12 14 22 23
つまり、リーダになろうと思えば4つの力が必要不可欠だということだ。
①コミュニケーション力 ②事務処理能力 ③勉強力 ④集中力
確かに、リーダーは組織のメンバーと充分にコミュニケーションをとらねばならない。そうでないと組織が崩れていってしまう。また上に立つものが事務処理能力なしだったら下のものが大変な苦労をする。大きな損害を受けかねない。また読書の一つもしないリーダーならば下のメンバーはついてはいかないだろう。だれも自分よりも教養、知力のないモノの下では働きたくない。最後の集中力、これも極めて重要だ。一つのことを集中してやり遂げて初めて大きな成果が生まれる。これは個人でも組織でも同じことだ。集中力なくして成果は得られない。つまり上記の4つの力を付けていく努力をしなければ将来、組織のリーダーとしてはやっていけないということになる。学級担任でもそうだ。4つの力の不足している教師に当たった子ども達がかわいそうである。当然、子ども達の力をのばしてやることができないのは容易に予想できる。
さて、先述の「組織のルール/浜口直太」には「今求められるリーダーの条件」という題で22項目が挙げられている。これを上記の4つの力に分類して表にしてみる。
リーダーに必要な力 項目
A コミュニケーション力
1)人間が大好きな人2)強力かつ柔軟なリーダーシップが発揮できる人6)組織のメンバー一人ひとりと対話できる人10)先見性のある人11)組織活動を通じて人間性・能力を高めていける人12)組織のメンバーに組織活動を通して夢と感動を与える事ができる人15)命懸けで人材(後輩)育成をしている、また将来する決意のある人16)平和をこよなく愛する人17)人の苦しみや悲しみが自分のことのように思える慈悲深い人
B 事務処理能力
13)公私にわたって自己管理ができ、メンバーの模範となる人
C 勉強力
2)生涯修行中であることを自覚し、誰からも学ぼうとする謙虚な人8)組織のために高い志・理念・目標を持ち、日夜努力する人14)メンターまたは師匠を持ち、その人から命懸けで学んでいる、または学んだ人18)リーダーとして、組織のメンバーの誰よりも学びチャレンジしている人
19)何事も、最初に自分で実践し、メンバーに模範を見せられる人
D 集中力
4)組織のために人生・命をかけられる人20)悪や不正をする勢力と命懸けで戦える人21)強靭な体力と精神力をもった人
多少無理をして各項目にあてはめてみた。が、それでもどの項目にも入らないものがいくつかあった。以下の4つだ。
5)組織のためならいつでもリーダーをやめられる人
7)組織にとって不可能なことを可能にしようとする気概のある人
9)組織の結果にすべての責任を持つ人
22)物理的にも経済的にもまったく欲のない人
この4つを人格力ということで一つにまとめる。するとリーダーに必要な力は先述の4つプラス人格力ということになる。図解してみると下のようになる。
写真参照
2.歴史上の人物から学ぶリーダー論
古今東西、優れたリーダーは存在する。歴史を見てみると西洋にも東洋にも傑出したリーダーや指導者がいた。歴史上の優れた指導者からリーダー論について学ぶというのは極めて有効な方法である。まず、日本ではどのようなリーダーがいたのか調べてみた。
英語学者で評論家である渡部昇一氏は「指導力の差/WAC BUNKO」の中で乃木希典(右写真)を優れた指導者の例として取り上げている。本書第4章は「乃木大将の『統率力』を身につけろ」となっている。ちなみに乃木希典とはどういった人物か。ネットで検索してみた。
乃木希典は日本の武士・長府藩士、軍人。陸軍大将従二位勲一等功一級伯爵。第10代学習院院長。贈正二位(1916年)。 東郷平八郎とともに日露戦争の英雄とされ、「聖将」と呼ばれた。しかしいわゆる「殉死」の評価についても諸説あるように、司馬遼太郎など「愚将」とする考え方もあるが、これに対する反論・擁護論も数多くある。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より
渡部氏は著書の中で乃木大将について次のように述べている。
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たとえば二百三高地攻撃の際の命令の仕方一つをとってみても、口数が少なく鋼鉄に目玉がついたような感じであり、乃木に対する部下たちの尊敬たるや恐るべきものであったという。乃木が通るだけで兵たちは不動金縛りの術にかかったように動けなくなってしまった。それほどの威厳と恐ろしさがあったというのである。
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乃木大将は当時抜群の人気と、威厳があったらしい。上層部のものにも心底信頼されている。再び渡部氏の著書より引用する。
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この旅順攻撃の際、あまりに時間がかかり、しかも犠牲者が多かったので、さすがに乃木に対する批判が起こり、「乃木を代えろ」という声も出た。しかし、この時に明治天皇は、「この仕事は乃木にしか出来ない。誰が行っても落ちないものは落ちない。乃木であればこそ兵たちも苦しい戦いを戦い抜いているのである。絶対に乃木を代えることはならぬ」と言われたという。
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乃木大将はいわば上司である天皇からものすごいまでの信頼を置かれている。これも乃木の人格力の所以だろう。乃木は先にあげた5つの力のうち、人格力が極めて優れていたらしい。敵の大将からも、外国の新聞記者からもその指導力と人格力に一目置かれ、好意的に取り上げられている。当時の日本には「乃木服」や「乃木鉛筆」なるものがあったらしい。服や鉛筆にまで名前がつく。それほど乃木は全国民から尊敬されていたらしい。そんな乃木について渡部氏は次のように分析している。
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単に武人であったばかりでなく、文人的要素を備えた教養人であったことが乃木の魅力であり、その後の専門教育の中で育ったプロの軍人になかった大きな人間的な信頼に基づく統率力を持ち得た原因であったろう。
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乃木は漢詩の達人であったらしい。漢詩をよく読み、そして戦地でも漢詩を作った。そのような圧倒的な教養が彼の魅力であり、人格を磨いていったようである。つまり、5つの力の勉強力も優れていたということだ。
3.自分自身の実践に活かせる学び
自分にはコミュニケーション力はあるか。事務処理能力はどうか。勉強力、集中力、人格力は?このように自問自答してみると、まだまだ自分には足りない点が山ほどある事が分かる。しかし、誰もが最初からこのような5つの力を身につけていたわけではない。誰もが最初から優れたリーダーであったはずはない。誰にでも駆け出しの時代はあったのだ。そして「地位が人を創る」という言葉もある。一つ一つの仕事の積み重ねの中でリーダーに必要な5つの力をつけていくことが10年後、20年後の教師生活を実りある素晴らしいものにしてくれる。そう考えて教師修業に励んでいく。